「昨日どうだったぁ〜??」

語尾にハートがつくんじゃないかっていうくらい甘い声で紗理奈がたずねてきた。

「別にー、普通に映画行っただけだよー。まぁ観たいの見れたのは良かった。ほら!この前言ってたやつ!」


スクールバッグから昨日観た映画のパンフレットを出して、紗理奈に手渡した。いいなぁ、なんて言いながらパラパラとめくっている。やっぱり学校に来れば、この質問はされるだろうと覚悟はしていた。


「なんにもなかったの?」

「あるわけないでしょ!」


いきなり少し声を大きくしてしまったので、明らかに違和感があったと思う。だけど何もないというように表情を変えず、ケータイをぽちぽちと弄る。

そんなわたしを紗理奈は一瞬ちらりと見たが、またパンフレットに目線を戻した。


「へぇ、……映画行って何も無かったんだ」



「う、ん……」

紗理奈の追い込むような言葉に、あの出来事を思い出してしまった。映画のあの少し過激なラブシーン。その時の彼のシタこと。指の熱、舌の感触。なぜかものすごく鮮明に頭に流れてきて、まるで今されているかのような……

意識しないようにと頭を振るけど、駄目だ。みるみる顔は赤くなり、熱を持っていた。



「ふぅん……」

「何もないから!!」


ニヤリと、彼と同じような意地悪そうな顔をする紗理奈にわたしは全く意味の無いであろう否定をした。