「あんたほんとに、むかつくわ」
「えっまた怒ってんの!?なんで!?俺なんかした!?」
ぽつりと呟いたつもりが聞こえていたらしくて。鈍感で馬鹿な彼は文字通りあたふたとしている。
「あんた勉強はできるみたいだけど馬鹿だよね、イロイロ」
“イロイロ”っていうのは、皮肉も含めて。わたしからしたら色んな意味を孕んでいるのだけど、彼にはきっと届かないだろう。
「未子ちゃんは普通に馬鹿だけどな」
やはり届いていないようだ。だけどこの言葉にわたしは何の返答もすることができない。やっぱり頭弱いよなぁ、わたし。なんて思いながらコーヒーの入ったグラスのストローを齧った。
「勉強ちゃんと追いつけてんの?」
「追いつけてるわよ」
正確に言えばまだちゃんとした授業は始まったばかりで、中学の予習なんかも多いからだ。自分でまいた種とはいえ、こういう質問に対してはものすごく答えにくい。
しかし質問してきた当の本人は、「へぇ」などとびっくりするくらい生返事だ。
「ていうか心配してんの?馬鹿にしてんの?」