ん?

それは聞き覚えのない男の子の声だけど、わたしを呼んでいるらしい。
なぜなら、その声の主であろう彼の手がポンとわたしの肩に触れたからだ。


「なんですか」

半ば面倒くさそうに振り向いて彼の顔を確認した。



「あれ?真子ちゃん?」


わたしは彼の顔を見て絶句した。
ワックスで整えられた長い黒髪に、左耳のピアス。
一度しか会ったことないし、数年経って顔は変わっているけど間違いない。西岡颯汰(にしおかそうた)だ。

彼も同じようにわたしを見てびっくりしたようで、目を真ん丸にさせている。




ていうかわたし、真子じゃない。



わたしには双子の姉、真子がいた。
顔はわたしと瓜二つだったけど、勉強もできないしうるさくて馬鹿なわたしと違って成績優秀で静かだった真子は、周りによく褒められたし、ものすごくモテた。




「真子じゃないです」

じろりと彼を見て、睨みつけた。