ソワソワと落ち着かなくなった気持ちを紛らわせるために。

男子とかそんなの関係なく、ボールを追いかけ突っ込んでいく。

高さでは絶対に敵わないけど。

身軽さと素早さでは、きっと男子には負けないはず。


「泰くん、あたしにもっとパスまわしてね!」

「了解!」


泰くんはあたしに向かってニッと歯を見せて笑うと。

ボールを奪い合ってる隼人たちのところへと走っていく。

180超えの男子の中に、さすがに入れないあたしは外から傍観するしかなくて。

泰くんも170ちょっとしかないから、その中の自ら進んで入って行くことはないけど。

任しとけ、とばかりの笑顔で突進していく背中を見送った。


ゲームに参加してないメンバーからは、『泰、行けー!』なんて言葉とともに笑いも起こって。

その言葉に応えるように、ニッと片方の口角は上がったのがチラリと見えた。


策士でもある泰くんのその表情はある意味レアで。

スイッチが入ったときにしか見られないモノでもあった。


ほんの少しの隙をついて。

にゅうっと伸びた泰くんの右腕によってボールがいとも簡単に奪われてしまう。

それを迷うことなく、あたしにパスを回してきた泰くんのその不敵な笑みで、いっそうヒートアップするメンバーたち。

中でも一番なのはやっぱり隼人か。