涼しい顔して、ヒョイッとボールを奪って。

キレイな弧を描きながらシュートを決める。


「さすがだね…!」

「今は目の前の大きな壁がないからね」


壁。

確かに、隼人は大きすぎから。

背も、体も、態度も、全部。


隼人の話し声をこれ以上気にしないように。

あたしも負けじとバスケットボールを追いかける。


「ゆず、パス!」


泰くんが、あたしに絶妙なタイミングでパスをくれたおかげで。

お手本のようなレイアップシュートを決める。

…はずだったのに。

いつの間にか電話の終わった隼人は、なんでもなかったかのようにすぐにゲームに加わって。

あたしの放ったボールを容赦なく叩き落した。


再び現われたあたしと泰くんの前に立ちはだかる大きな壁に。

あたしたちは互いに苦笑いしするしかなかった。


「まったく、容赦ないんだから」


泰くんの呆れにも似た溜息まじりの言葉に。

隣で不貞腐れるあたし。


いつもどおりボールを追いかけては、豪快なプレイをする隼人を見て。

特に変わった様子もない。


『翔』


さっきの電話で、そう聞こえたような気がしたけど。

…聞き間違い、だよね?