「これから会えないか?」

『どうした、急に』

「いや…ちょっとさ、話したいことがあって」


歯切れの悪い俺の言い方に、櫻井は『翔らしくない』と笑う。


『なんだよ、気持ち悪いな……』

「ひでえ言い方。ま、たいしたことじゃないんだけどさ」


恋愛相談なんて、本当はガラじゃない。

俺も、櫻井も。


『今、地元も運動公園にいるから、来たいなら来れば?』

「ん、じゃあ、気が向いたらな」


口ではそう言いながら。

身体はもう、運動公園へと向う気満々で。

財布とスマホだけ持って、外に飛び出した。


自転車を飛ばせは20分くらいの距離。

その道のりを、ただひたすら自転車のペダルを漕いだ。


疲れていたはずなのに、不思議と身体は軽かった。


運動公園の前の駐輪場の近くには、櫻井が当たり前のように待っていた。


気が向いたら…なんて言葉。

まるで聞いていなかったかのように。


電話を切ってからまだ15分くらい。

それだけがむしゃらに自転車を漕いで来たため、汗だくになってる俺を見て。

ははっと強面の顔をクシャッと崩して笑ってる櫻井がいる。


俺が、自転車飛ばしてくることもわかってたのか。

ここに来るのが必死だったみたいで急に羞恥心に襲われた。