今まで、なんとなくでしか恋愛をしてこなかった。
女の落とし方だって、口説き方でさえよくわからない恋愛ベタの俺よりも。
秋山のほうがずっとまともな恋愛をしてきてるはずだ。
こんなかっこ悪いこと、相談できるような友だちもいないし。
こんなこと、恥ずかしくて言いたくもない。
ふと、頭に浮かんだ大男に話してみたところで。
きっと大笑いされて終わるんだろうな。
なんて、思いながらも。
ポケットに手を突っ込み取り出したスマホを眺めてフッと自嘲気味な笑みが零れる。
スマホから無機質な機械音が何度か鳴った後。
『もっしー』なんて、どこかふざけた声が漏れ聞こえてきた。
その声を聞いた途端、知らないうちに力の入っていた肩がストンと下りたような気がして。
少しだけ、気持ちがラクになる。
「今どこ?」
突然の俺の質問に、『はぁ!?』っと怪訝な声が返ってくる。
それもそうだ、と笑う俺に電話の向こうの櫻井は、きっと眉間にシワを寄せてすごい顔をしているに違いない。

