「別に。用事があったんだろ……」
神崎ゆずに、会って来たんだろ……
同じクラスのクセに。
わざわざ放課後に二人で会う理由なんて。
「……女、か?」
知ってるくせに。
見たくせに。
気づいたらこんな質問をしてる自分がいて。
「まあ、な」
思ったとおりの秋山の答えに、馬鹿みたいに気持ちがザワザワする。
「彼女でも出来た?」
だから。
そんなこと、聞くなって!
自分が言ったくせに。
自分で突っ込んで。
聞きたくない、と心が拒否反応を起こして息苦しさを感じた。
「俺さ…」
ストレッチをしたまま、秋山がポツリと話し始める。
その声はとても小さくて。
俺に背を向けてる秋山の声は聞き取るのもやっとなくらいなはずなのに。
体育館の中が、一瞬だけ音がなくなったのような錯覚に陥る。
「昨日…――」
焦らすなよ…
ハッキリ言えよ…
聞こえるのは、バクバクと口から飛び出しそうなほど煩い自分の心音のみ。

