「遅かったな」
俺は出来るだけ普段どおりに接してるつもりだけど。
その声が、どこか刺々しくも聞こえた。
そんな俺を見て、意味深に笑う秋山に。
左の頬がピクッと引きつったのが自分でもわかったけど。
あえてそれを隠すこともなく秋山と対峙する。
他の部員たちはシュート練習に始めたその横で。
簡単に準備体操をした秋山は俺に背を向けて座った。
俺の前に座る秋山の背中を凝視して。
あの後神崎ゆずとはどうなったのだろう、とそればかりが気になってしまう。
二人の笑顔を思い出すのが嫌で。
脚を伸ばし前屈をする秋山の背中を力任せにグーッと押した。
若干、いつもより力が入ってることに。
秋山が気づかないわけない。
「悪いな、翔」
それなのに、力加減も出来ない俺に、秋山はストレッチをしながら少し申し訳なさそうに謝ってくる。
そんな秋山を見て、自分の小ささに溜息がこぼれそうになった。
こういうところが、俺と秋山の違いなんだって思い知らされる。

