「どうした? 翔、荒れてんな」
「…すんません、何でもないっす」
先輩の苦笑まじりの声に、視線は床をに向けたまま言葉だけで謝罪をする。
どうにかこのイライラを抑えなければと、何度か深呼吸を繰り返してはみるけれど。
それほど効果は見られなかった。
冷静になれ。
ひとまず落ち着こう……
別に。
誰も悪くないんだから。
「秋山、少し遅れてくるそうです」
部室を出て行く部長の姿が目に入って、慌ててそう口にすると。
部長は軽く返事をしながら片手を上げて部室を出て行った。
それに続くように、他の部員達もぞろぞろと出て行く姿を横目に。
自分も急いで着替え、みんなを追いかけるように体育館へと向かっていった。
秋山は体育館へ来たのは、部活が始まって40分ほどたってからだった。
部長に軽く頭を下げ、何か話をしているのが見えた。
「速水、秋山のアップに付き合ってやれ」
部長の声が体育館に響く。
「…うっす」
本当なら、今は秋山とあまり接触したくない。
だけど、秋山は何も悪くないんだ。
俺が勝手にイラついてるだけ。

