事の発端は、去年行われた新聞部主催の『美男美女ランキング』だった。


あたしは嬉しくもない『校内一の美少女』なる称号を頂いた。

それを校内新聞で大きく取り上げられて、一躍有名人。


おかげで、あたしの見た目だけに近づいてくる男子はあとを立たない。

よく知りもしない人と付き合うなんて、そんなことできないし。

したくもない。


だけど、それが余計に男子達に火をつけたらしい。


“神崎ゆずを落とせるのは誰か”


そんなゲームみたいな気持ちで告白してくる人も少なくない。


勝手なことばかり言われて。

勝手なイメージで近づいてきて。

勝手にイメージと違ったと幻滅されても、あたしにどうしろと言うのだろう。


重たい足取りのままゆっくりと階段を下りていき。

そのまま中庭に向った。

昼休み、ここでお弁当を食べる人も少なくはない。


楽しそうにお弁当を囲む生徒たちを横目に通り過ぎていくと。

その先、少し日陰になった場所にポツンと置かれたベンチが見えた。


この季節はまだ日陰は肌寒く感じるのか、あまり人気のないこの場所。

そのベンチに一人の男子生徒が座っているのが見えた。