「はい、はい、ごめんなさい」
「“はい”は1回」
「は~い」
その瞬間、あたしの後頭部に鈍い痛みが走った。
「いっ、たいよ」
後頭部を押さえるあたしを横目に『ざまぁ』とケラケラとムカつく顔して笑ってるから。
今度はあたしが持ってたカバンでそいつの無防備な背中を思い切り叩く。
「ムカつく」
あっかんべーをして、彼を置いて公園の中へと歩いていくあたしを。
立ち止まったまま見つめてるだけで。
「何してんの、早く行こうよ」
仕方なく振り返って笑顔を見せれば。
途端に、ニカッと真っ白な歯を見せて笑う現金なヤツ。
隣に並ぶと、あたしの肩に腕を回してきて。
二人の距離は一気に縮まる。
「隼人、重たい…」
「まあまあ、気にすんな」
そう言って無所気に笑うこの男は。
同じ高校に通う、櫻井隼人。
速水翔のクラスメイトだ。

