「よかった……」
「ん、何が?」
「秋山くんって思った以上に話しやすくてよかったな…って」
本当は、ここに来るまですごく緊張していたことを素直に話す。
「あたし、男の人と話すの苦手だったから…」
苦手というか、必要以上に近づかないように気をつけてたというか。
周りに誤解されるのも、変に勘違いされるのも面倒で。
ここ最近はなんとなく避けてきたから。
あたしの言葉に、秋山くんは少し眉を下げてフッと笑った。
「…あんまり意識されてないのも悲しいけど、ま、いっか」
「え…?」
「ううん、なんでもないよ」
ボソッと零された秋山くんの言葉を聞き取ることが出来なくて。
キョトンとするあたしに向かって、優しく微笑んで小さく首を振る秋山くんは。
本当になんでもなかったかのように、自然な流れで次の話へともっていった。
好きな教科、嫌いな教科。
好きな食べ物、嫌いな食べ物。
趣味、特技。
今、一番興味のあること。
まだほとんど知らないお互いのことを知るために。
お互いに質問しあって、それに答える。
これから部活のある秋山くんを長い時間引き止めておくのは申し訳なくて。
だけど、いろいろ話をするうちに、秋山くんに親近感が沸くようになっていった。

