「ゴメンね、遅くなって」
突然後ろから声をかけられて、ビクッと肩が跳ねる。
「あ、秋山くん……」
全然気がつかなかった。
「来る途中に担任に雑用を押し付けられちゃってさ…」
少し困ったように眉を下げる秋山くんに、小さく首を振る。
「委員長も大変だね」
「まるで担任の小間遣いだよね、ホント」
「フフ、それはそれは…間違ってないかもね?」
「あ、やっぱり? ゆずちゃんもそう思うよね」
まったく…なんて溜息を吐きながら、あたしの前の席に座る秋山くんを見つめる。
口ではあんなふうに言ってるけど。
本当は、自分から率先してその雑用を手伝ってるって知ってるよ。
頭も良くて。
バスケも上手くて。
優しくて。
面倒見も良くて。
気遣いもできる。
そんな素敵な人が、あたしなんかのことを好きだと言ってくれる。
あたしは、その気持ちに応えることができるのかわからない。

