彼がモテることは知ってた。
校内でも公認のモテ男。
きっと、あたし以上にたくさんの人に告白されてるはず。
遊び人。
なんてウワサを聞いたこともあるけど、実際はどうだかわからない。
少し前は、短い周期で彼女が変わっていたようだけど。
今は、まったくそんな姿を見なくなった。
「……モテモテですこと」
あたしの独り言はまるで嫌味みたいで。
慌てて視線を室内に戻した。
外の光景が気になって、途端に落ち着きがなくなる。
早く秋山くん来ないかな…と視線を入り口に向けたところで。
廊下からも、足音一つ聞こえてこない。
テスト期間ではない放課後の図書室は、まるで異空間のように静かでどこかひんやりとしていた。
おもむろにスマホを取り出して。
メッセージを作成する。
『今日、行っていい?』
たったそれだけのメッセージ。
『了解。待ってるよ』
既読後すぐに返ってきたメッセージに、クスッと笑みを零し。
窓から入ってくる風を感じながら、よく晴れた青空をボーっと眺めていた。
もう、中庭に視線を向けることはなかった。

