別に好きなわけじゃない。
昨日初めて話したから、ちょっと気になるだけ。
はぁ…と小さく息を吐いて、視線を左に移動させることで少しだけ見える中庭。
奥のほうまでは見えないけど、ここからだと中庭にある桜の木とベンチが見えるのだ。
あのベンチは、昨日、秋山くんに告白された場所でもある。
昨日、今日で、いろんなことが起きたな、と改めて思う。
そのベンチに、一人の女の子が俯きかげんで座っているのが見えた。
顔も見えない、誰かもわからないその彼女からは、ここまで緊張感が漂ってくるような気がした。
きっと、誰かに告白するんだ。
そう、直感で思う。
頑張ってほしいな……
うまく良くといいな……
他人事ながら、応援してる自分に笑みが零れた。
だけど、それもすぐにあたしの表情から笑みが消えた。
視界の片隅に見えたキラキラの髪。
チラッと見えた、優しい笑顔。
そこに現れたのが、速水翔だったからだ。

