モテ子☆モテ男の恋愛事情。



別に好きなわけじゃない。

昨日初めて話したから、ちょっと気になるだけ。


はぁ…と小さく息を吐いて、視線を左に移動させることで少しだけ見える中庭。

奥のほうまでは見えないけど、ここからだと中庭にある桜の木とベンチが見えるのだ。


あのベンチは、昨日、秋山くんに告白された場所でもある。

昨日、今日で、いろんなことが起きたな、と改めて思う。


そのベンチに、一人の女の子が俯きかげんで座っているのが見えた。

顔も見えない、誰かもわからないその彼女からは、ここまで緊張感が漂ってくるような気がした。


きっと、誰かに告白するんだ。

そう、直感で思う。


頑張ってほしいな……

うまく良くといいな……


他人事ながら、応援してる自分に笑みが零れた。

だけど、それもすぐにあたしの表情から笑みが消えた。


視界の片隅に見えたキラキラの髪。

チラッと見えた、優しい笑顔。

そこに現れたのが、速水翔だったからだ。