部活を、なのか。

それとも、片思いを、なのか。


どちらにせよ、彼女のエールを受け取るように片手を上げて。

振り返ることなくそのまま歩いていく。


ほんの少し、彼女に背中を押されて勇気をもらった気がして。

自然と口許が緩んでしまった自分に気づく。


頑張ってね…か。


今までなら、話をしたない彼女を遠くでただ見てるだけしかできなかった。

もしかしたら、これからもそうだったかもしれない。


だけど、昨日、見てるだけの神崎ゆずと接触したことで。

もっと近づきたいって、もっと彼女を知りたい。

そんな欲望が顔を出したんだ。



そのまま中庭を突っ切って、部室へと向っ手歩いていく。


放課後の中庭にはそれほど生徒もいなかった。

ここから見える校舎は、保健室、音楽室、化学室。

それから少し見えづらいけど図書室も見えるんだ。


あまり気にしたことがなかったけれど。

今朝、図書室の窓から彼女の姿を見つけたな…なんて思い出して、もう一度その場所にゆっくりと視線を向けた。