「さてと。あたしは先に行くね」
そう言い残して、何か言いたそうな愛美たちから逃げるように足早にその場所から立ち去るあたしを。
「えっ!?」
「ゆず?」
二人は呆気にとられているだけだったけれど、すぐに愛美が立ち上がった気配がした。
だけどそれに振り返ることはせずに。
あたしに向かって何か言っている愛美の声が。
バタン、重たい扉が閉まって遮断された。
ふう…と息を吐き、もう一度スカートの埃をパンパンと叩きながら身なりを整える。
少しシワになったスカートを撫でてから。
ポーチから鏡とお気に入りのピンクのグロスを取り出して、鏡に映る自分の唇にそのグロスをつけて。
鏡の中には作り笑顔のあたし。
そんな不自然な笑顔も、いつの間にか慣れっこになってしまった。
どこかおかしなところはないか入念にチェックして。
最後に前髪を整えてから、よし! と気合を入れる。
「完璧」
本日2度目の告白。
これから行ってまいります。
もう一度、よし! と気合を入れてから、ゆっくりと階段を下りていった。

