「……部活前なのに、ごめんね」
「うん、まだ時間あるから大丈夫だよ」
なるべく穏やかに。
優しくそう言って笑顔を向けると。
彼女の頬がさらに高揚し熱を帯びていく。
「あの、あたし……」
潤んだ瞳で真っ直ぐに見つめられて。
真っ赤なのに、ちゃんと俺の顔を見てくれる。
そんな彼女のことが。
正直、可愛いと思った。
「速水くんのことがずっと……」
緊張で言葉が切れて。
ほんの少しの沈黙のあと。
「好きです…」
少し震えた声が、彼女の真剣な思いを伝えてくれる。
「ありがとう……でも、ゴメンね」
だけど、俺の目には彼女は映らない。
そんな真っ直ぐに思いを伝えてくれる彼女を前に、俺の脳裏には神崎ゆずの顔が思い浮かんだ。
中村さんも可愛いと思う。
誰かが騒いでいただけあって、笑顔もテレた顔もすごく魅力的だと思う。
それでも俺は、やっぱり神崎ゆずが好きなんだ。

