中庭に着くと、ベンチに座る女子生徒の後ろ姿が目に入った。
その背中を見ただけで、緊張感が伝わってくる。
何度経験しても、この緊張感は苦手だった。
まだ、告白されたわけではない。
でも、間違いなくこれは告白されるシチュエーションで。
その“告白”に、どれだけの勇気が必要とされるのか俺には想像できなかった。
俺にはない、その勇気。
だからそこ、答えは“NO”でもちゃんと誠意を持って接したいと思ってる。
「中村さん」
俺は、軽く深呼吸をしてから。
彼女の名前を呼んだ。
「あ……」
俺の声に反応して肩を震わせてから。
慌てた様子で立ち上がって振り返る彼女は、緊張からなのかぎこちない笑顔のまま俺を見た。
「あ、あの、」
ギュッと握り締められた手のひら。
その手は微かに震えているようにも見えた。
「来てくれて、あ、ありがと……」
消え入るようなか細い声。
何度か繰り返された深呼吸は、きっと緊張を和らげるためのものだろう。

