モテ子☆モテ男の恋愛事情。



中庭に着くと、ベンチに座る女子生徒の後ろ姿が目に入った。

その背中を見ただけで、緊張感が伝わってくる。


何度経験しても、この緊張感は苦手だった。


まだ、告白されたわけではない。

でも、間違いなくこれは告白されるシチュエーションで。


その“告白”に、どれだけの勇気が必要とされるのか俺には想像できなかった。


俺にはない、その勇気。

だからそこ、答えは“NO”でもちゃんと誠意を持って接したいと思ってる。


「中村さん」


俺は、軽く深呼吸をしてから。

彼女の名前を呼んだ。


「あ……」


俺の声に反応して肩を震わせてから。

慌てた様子で立ち上がって振り返る彼女は、緊張からなのかぎこちない笑顔のまま俺を見た。


「あ、あの、」


ギュッと握り締められた手のひら。

その手は微かに震えているようにも見えた。


「来てくれて、あ、ありがと……」


消え入るようなか細い声。

何度か繰り返された深呼吸は、きっと緊張を和らげるためのものだろう。