午後の授業は散々だった。
秋山の優しそうな笑顔と、それに応えるように手を振る神崎ゆずが頭から離れなくて。
何度溜息が出たことか。
実際は、ハッキリと見えたわけではない。
神崎ゆずが、どんな顔して手を振っていたのかもわからないはずなのに。
勝手な妄想で二人の関係が脳内変換されていく。
いつもは張り切っていく部活でさえも、こんなにも足取りが重たい。
今朝、秋山は遅れると言っていた。
クラス委員のアイツのことだ、どうせ担任に雑用でも頼まれたのだろう。
昼休み、あんな無視するように逃げてしまったから。
ちょうどよかったのかもしれない。
そんなグダグダといろんなことを考えながらも。
廊下を歩く俺は終始笑顔で、周りの女子生徒に愛想をふりまく。
……何やってんだろ。
ホント、そんな自分がくだらなすぎて情けない。
部室へ行く前に、これから中庭に寄って水色の手紙の差出人にも会わなければならないし。
はぁ…と思わず出てしまった溜息は。
誰かに気づかれただろうか。
笑顔で手を振る彼女たちを横目に、無駄な心配だったな…と鼻で笑った。

