「えっ……」
思わず零れ落ちた間抜けな声は。
周りの声に掻き消される。
秋山と神崎ゆずは同じクラスだ。
だからなんだと、自分に言い聞かせる。
「翔、どこ行くんだ?」
「……教室、戻るわ」
タオルを被ったまま立ち上がると。
秋山を見ることなく、俯き加減のまま歩き出す。
「翔…?」
秋山の呼びかけにも応えるつもりもなく、無言のままその場を後にした。
あぁ…
最悪だ。
昔からそうだ。
俺は、秋山には勝てない。
勉強も、バスケも。
それに加え、女までもか。
いつもならすぐに諦めてた。
どうせ敵わないならと、勝負すらしてこなかった。
だから、俺は、このまま彼女を諦めるのか。
たかが手を振り合っただけじゃないか。
二人がどんな関係かなんてわからないじゃないか。
ただのクラスメイト。
ただの友だちかもしれない。
「……諦められっかよ」
どうしても手に入れたいんだ。
そう思った女は、神崎ゆずが初めてなんだ。
他の男には渡したくない。
絶対に…―――

