モテ子☆モテ男の恋愛事情。



「えっ……」


思わず零れ落ちた間抜けな声は。

周りの声に掻き消される。


秋山と神崎ゆずは同じクラスだ。

だからなんだと、自分に言い聞かせる。


「翔、どこ行くんだ?」

「……教室、戻るわ」


タオルを被ったまま立ち上がると。

秋山を見ることなく、俯き加減のまま歩き出す。


「翔…?」


秋山の呼びかけにも応えるつもりもなく、無言のままその場を後にした。


あぁ…

最悪だ。


昔からそうだ。

俺は、秋山には勝てない。


勉強も、バスケも。

それに加え、女までもか。


いつもならすぐに諦めてた。

どうせ敵わないならと、勝負すらしてこなかった。


だから、俺は、このまま彼女を諦めるのか。



たかが手を振り合っただけじゃないか。

二人がどんな関係かなんてわからないじゃないか。



ただのクラスメイト。

ただの友だちかもしれない。


「……諦められっかよ」


どうしても手に入れたいんだ。

そう思った女は、神崎ゆずが初めてなんだ。


他の男には渡したくない。


絶対に…―――