モテ子☆モテ男の恋愛事情。



いや、まさか。

そんなわけ、ない。


そんな動揺が、俺の視線をユラユラと揺らす。

だけど彼女から目を逸らせなくて、ソワソワと落ち着きもなくなっていく。


俺を見てる…?


なんて自意識過剰なんだろうと思う。

だけど、そうであってほしいと望んでしまう。


たまたま見ていただけかもしれない。

もしかしたら、俺じゃない誰かを見ていたのかもしれない。

この中に、目当ての相手がいるのかもしれない。


そんな思考がグルグルと頭の中を駆け巡って、整理しようにもテンパリすぎて追いつかない。


この距離。

表情まではよくわからないはずの距離なのに。

彼女が優しく微笑んでいるのが雰囲気から伝わってくる。

視線はずっとこっちに向けたまま。

その視線の先が、俺だったらいいのに……


そんな願いも。

次の瞬間に打ち砕かれた。


隣に来た秋山が、俺と同じように校舎へと視線を向けた瞬間。

神崎ゆずが小さく手を振ったのが見えた。


それは、俺じゃなく秋山に向けてだった。