モテ子☆モテ男の恋愛事情。



櫻井は、俺の隣の席に豪快に座る。


「寝坊か?」


偉そうに踏ん反り返って。

だけど、教室にいるときはいつも俺の側にいてくれる。

もちろん、女避けのためだけど。

櫻井も俺も、わざわざそんなことを口にはしなかった。


「いや、ちょっとな……」


まさか、神崎ゆず見惚れてて遅れたなんて。

言えるわけがないだろう。


櫻井は特に気にすることなく、ふーんとなんとなく頷きながらスマホを弄っていた。

そんな俺たちのところに近づいてきた他の友達が、俺の机の上に水色の封筒をさりげなく置いていく。


それがなんなのか、なんて言わなくてもなんとなくわかる。


「またか…」


櫻井がその封筒を見てポツリと言葉を零した。


「いっそ、彼女作っちまえば?」

「はっ、簡単に言うなよ」

「簡単だろ?」


そういう櫻井の言葉に被さるようにチャイムが鳴ると、櫻井が自分の席へと戻っていった。


簡単かもしれない。

でも、それじゃダメなんだ。

俺が欲しいのはただの“彼女”ではないのだから。


片思い歴、1年。

……そんなの、恥ずかしくて言えるわけがない。