「翔、おはよ」
校門に差し掛かるところで、よく知った男の声が聞こえてきた。
その声で、ホッとする。
これで少しは解放されるって。
「うっす、秋山」
振り返り片手を上げれば、俺以上に爽やかな笑顔で同じように手を上げて駆け寄ってくる秋山の姿を捉えた。
「助かった」
「あはは、いつも朝から大変だな」
秋山が来たことによって、自然と俺の周りから去っていく女たちにまた小さく溜息を吐いて。
「マジ、うぜっ…」
「王子がその顔ヤバイだろ?」
あはは、と他人事思って楽しそうに笑う。
って言うか、他人事だし。
実際、反対の立場なら、俺だって秋山を笑ってただろうけど。
「おまえも、うざい」
眉間にシワを寄せて睨みつけて。
秋山の脛近くを目掛けて蹴りを食らわしたところで。
持ち前の反射神経で、ひょいっと簡単にかわされてしまう。
そのせいで余計にイライラが募るのだ。