「はぁ……」
梅雨時なのに、雲ひとつない爽やかすぎるほどの快晴の朝。
なのに、俺は朝から溜息ばかり。
学校へと向う途中。
どこからか感じる視線のほかに。
あからさまに色目を使って寄ってくる女子生徒。
少しでも気に入ってもらいたくて。
少しでも俺の視界に入りたくて。
朝から気合入りまくりの彼女たちに、俺はいつも仮面のような笑顔を向ける。
バサバサの睫毛も、テカテカの唇も。
まったく魅力を感じていないことに、彼女たちは気がついていないのだ。
これのどこが可愛いのか…ホント不明だ。
校内一モテる男。
そんなどうでもいい称号をもらってからの俺、速水翔の朝は、こうやって始まるのだ。
昔から、確かにモテる。
別に否定をするつもりもない。
中学の頃から、女に不自由したこともないし。
それなりにオイシイ思いだってしてきた。
だからと言って、遊んでいたわけではないし。
ちゃんと、それなりに好きだった。
誰でもいいわけじゃないし。
もちろん、俺にだって選ぶ権利くらいある。