「ゆずの見た目と性格のギャップだって、すごく魅力的だと思うよ。あたしも可奈も、そんなゆずが好き」

「フフ、ありがと…」

「大丈夫。ちゃんとゆずの中身も全部を見て好きだって言ってくれる人が絶対に現れるから」

「…だと、いいんだけどね」

「大丈夫、大丈夫!」


ふと頭によぎったのは、昨日のテレた秋山くんの顔だった。


彼は、ちゃんとあたしの中身も見てくれてる。

そう思おうとしても、やっぱりどこか疑ってしまう自分もいることに気がつく。

これじゃダメだって思っても、そう簡単にはいかないものだな…と。

愛美に気づかれないように苦笑したのだった。


「やばっ!? もう時間ないじゃん!」


結局何も聞けなかったじゃない、と口を尖らせ怒るフリをしながら。

あたしを見つめるその瞳は優しいまま。

そんな愛美を見つめ返して微笑むと。

さあ、教室へ戻ろう! と、あたしの手を取り立ち上がらせてくれる。


「もうチャイム鳴っちゃうよーっ!」


急げー! と、あたしの手を引いたまま図書室を後にして。


「愛美、ありがとね」


あたしの言葉が愛美に届いたのかはわからないけれど。

チラッと見えた愛美の横顔がどこか嬉しそうだったから、きっと伝わったよね?


「廊下は走るなよー!」

「はーい!」


途中、先生に怒られて。

返事はするものの、そのまま二人で走って教室へと戻った。