「ほら、愛美。ゆずが怖がってるでしょ」


呆れた、と溜息をわかりやすく吐いて。

あたしと愛美の間に入って鼻息の荒い愛美の肩をポンポンと叩く。

興奮する彼女を落ち着くように言い聞かせてる可奈に、少しホッとして倒れそうになっていた体勢をを戻した。


「はぁ…それにしても、さすが校内一の美少女だわ」


あたしたちから離れた愛美は『まいったまいった』とばかりに両手を上げて、大袈裟に首を左右に振ってみせた。


「…愛美、その言い方やめてよ」


ふざける愛美をキリッと鋭く睨みつめると。

ゴメンゴメン、と両手を合わせながら、たいして悪いとも思っていないであろう愛美の横で。


「12人」

冷静に呟く可奈。


「可奈!?」
「12人!?」


あたしと愛美の声が重なって、その場に響き渡った。

慌てて口を両手で押さえて、キョロキョロと回りを確認するあたしとは反対に。

開いた口が塞がらないアホ面の愛美。


声の大きさを制御できなくて、思った以上に大きな声が出てしまったけれど。

あたしたちの近くには他の生徒がいなかったことにホッとする。