こういうときに連れて行かれる場所は決まって図書室で。

図書室の一番奥の席、本棚で入り口から死角になったその場所は。

あたしたちのお気に入りの場所。


その窓際の席にあたしを座らせると、やっと掴んでいた腕を離してくれて。

向かいの席に愛美も腰を下ろした。


窓から心地良い風が入ってくる。

その風が、あたしの髪を優しく揺らした。


夏の匂いがする。

梅雨の合間の晴天、蒸し蒸しした空気も今日はカラッとしていて気持ちがいい。

顔にかかる髪を掻き上げて、この窓から見える校門へとなんとなく視線を向けると。


あっ…

速水翔だ。



朝日を浴びて、キラキラと輝く柔らかそうな髪。

綺麗に整った顔で、綺麗に笑うその姿の隣には。

秋山くんの姿があった。

同じバスケ部で、仲が良いことも知っていた。


秋山くんが何かを話しかけると。

速水翔はクシャッと顔を崩して無邪気に笑う。

きっとそれが、本当の速水翔なんだろうな…と、思わず見惚れてしまい。

頬が自然と緩んでいくのがわかった。