翌朝。

教室の中には、両手を腰に当ててた状態のまま、あたしが登校してくるのを待ち伏せている愛美がいた。


愛美にまたいろいろ聞かれるだろうとは思っていたけれど。

それがまさか朝からだなんて思ってなかったから、思わず笑ってしまった。


もちろん逃げることなんて不可能で。

その愛美の迫力に、クラス中が固唾を飲んで見守っている状態だった。


「愛美、お、おはよ?」


ニコリ。

上手く笑えてる気のしない不恰好な笑顔で、愛美に近づくあたしを。

ニコリ。

それはまったく笑っていない愛美の笑顔に、ビクッと肩を震わせたのはあたしだけじゃないはずだ。


「さ、ゆず。行くよ!?」


有無を言わせないとは、まさにこのことであろう。

カバンもまだ置いていないあたしの腕を掴んだ愛美は。

近くにいたクラスメイトになぜかあたしのカバンを渡して、そのまま教室を出て行こうとする。


ズカズカと鼻息を荒くして歩く愛美を、みんなは避けるように道を開けていく。

ここで誰か愛美の勢いを止めてくれるツワモノは…いないよね。


そんな呆れにも似た溜息は、朝の廊下の生徒たちの笑い声に飲み込まれていく。