女子が揃って『王子様』だと騒ぐその理由も納得できるほどの容姿。
スーッと通った鼻筋。
くっきり二重のアーモンド形の瞳に、綺麗に整った眉。
背も高くて、どこか中性的なキレイな顔。
少し色素の薄い柔らかそうな髪は、右に流すように綺麗にセットされている。
笑うと下がる目尻のせいで、少し幼さも感じるけれど。
少し低めのその声と真顔とのギャップに色気を感じてしまうくらい。
「うちのクラスに、何か用?」
確か、速水翔はE組だったはず。
ここA組とはフロアが違うので、彼がわざわざこのフロアにやってくるってことは何か用事があってのことだろう。
「あぁ、秋山まだいる?」
わざとだろうか。
教室の中を覗くフリして、あたしとの距離を一気に詰めてきた。
そのせいで、さっきの爽やかな香りをまた感じてまたドキドキする。
近すぎるその距離。
速水翔の香りがあたしに纏う。
きつすぎることのない香りでも、あたしには刺激が強すぎてクラクラしそうになる。
一歩下がれば、一歩近づく。
二人の距離はこれ以上離れることはなくて。
…これ、絶対にわざとでしょ?
絶対に確信犯だって。
こうやって、他の子もみんなクラクラさせるに違いない。

