あまりに突然のことで、身構えることも出来ずにただ次に来る痛みに耐えるようにギュッときつく瞳を閉じると。
痛みを感じたのは、背中でもお尻でもなく、右手首。
誰かに手首を掴まれたとか、そんなことを考える余裕もなく引き寄せられたかと思えば。
そのままその人の腕の中にスッポリと納まっていた。
瞳を閉じていたせいで、それが誰なのかもわからなくて。
わからないから余計に怖くて瞳を開けることが出来ない。
わかるのは、あたしよりも大きな体と。
フワッと香る爽やかな匂い。
このままこの腕の中にいるわけにもいかなくて。
と言うか、傍から見ればこんなところで抱き合ってる二人なわけで。
我に返るなり、今度はドンッとその胸を押し返した。
「ご、ごめんなさい…!」
謝罪の言葉とともに顔を上げれば。
目の前にいた人物に驚いて言葉を失った。
金魚みたいにパクパクと口を動かすだけの、なんともみっともない姿をさらしてしまったことに気がついて。
今度は一瞬で真っ赤になるあたしとは反対に。
爽やかすぎるほどの笑顔であたしを見下ろしてくるその人に、思わず見惚れてしまう。

