「昼休み、どこへ行ってたの?」
その日の放課後。
思ったとおり、愛美がニヤニヤとした顔であたしの席まで近づいてくる。
そして、意味深な笑みを浮かべながら言葉を放つ。
あたしの席の前に立ち。
『さあ、白状なさい!』とばかりに仁王立ち。
そんな彼女を無視したまま、帰りの支度をするあたしの顔をグッと覗き込んでくるなり。
「で? 誰と会ってたの?」
質問が若干変わってることも、気にしない。
「…あぁ、うん、秘密?」
うふっ、なんて可愛く笑ってみせても。
まあ、愛美には通用しないことくらいわかっているのだけれど。
そんな冷ややかな目で見られたって、素直に答えるわけがない。
「委員長と一緒だったってホント?」
それに、彼女の情報網をもってすれば。
そんな情報の一つや二つ……
って。
…もう、知ってるんじゃん。
「さあ? なんの話?」
誤魔化せるとは思ってないけど。
ゴメンね、愛美。
だからってバカ正直にあたしの口からは言わないよ?
動揺1つ見せずに、愛美の言葉を受け流していくだけ。
「愛美、部活はいいの?」
そんなあたしに助け舟を出してくれるのはいつも可奈で。
可奈の言葉で時計を見るなり『やばっ!』と慌てて荷物をまとめだす愛美の姿に。
今日は見逃してもらえたとホッとする。

