約束の時間まであと少し。
そんなとき、インターホンが鳴ったことで。
落ち着きがなかったあたしの身体は、今度はピーンと背筋を伸ばしたまま固まった。
『はーい』なんてお母さんの声が聞こえて。
その声と一緒にパタパタと廊下を早歩きするスリッパの音。
あたしもそれを追いかけるように玄関へと向うと。
ドアを開けた向こう側には、お母さんにあいさつをしてる可奈の姿が見えた。
「可奈、おはよ!」
「おはよ、ゆず」
元気にあいさつをするあたしに、可奈もあいさつを返してくれるけれど。
どこかいつもと違った可奈の姿になんだか不信感を抱いたとき。
玄関のドアがさらに大きく開いて。
そこには、不機嫌さを隠そうともしない顔を顰めた大男の姿。
「…って言うか、俺も誘え」
「隼人……」
「俺だって、翔たちの試合観たいつーの」
そう言って、せっかくブローした髪をクシャクシャに撫で回してくれる。
そのおかげで、一瞬でボサボサ頭の出来上がり。
いつもなら『やめてよ!』なんて強く反抗できるのに。
少し唇を尖らせたまま、無言で髪を手櫛で整えるだけ。
「ボディーガード、必要だろ?」
そういう隼人の目が、少し切なそうに歪むから。
そこから逃げるように、視線を足元に落とした。

