―Side ゆず―
「練習試合?」
「うん、そう。来週の土曜日なんだけど…」
教室に入るなり、可奈のところへと一目散に向った。
今日もまた速水くんと一緒だったね、なんて冷やかされながら。
さっきの会話を思い出していた。
二日連続で会えるなんて思ってなかった。
いつもはもう少し遅い時間か、朝練があって朝早いかのどちらかだったから。
別に…意識的に見ていたわけじゃない。
たまたま、見えただけ。
そう思ってたんだけどな……
今朝、無意識のうちに拾ってしまった彼…速水くんの声。
それと一緒に聞こえてきた、女の子の楽しそうな話し声。
『翔』と呼ぶ、親しそうな二人を背後に感じて。
振り返りたい気持ちをグッと抑えて、真っ直ぐ前を向いて平然と歩いていた。
女の子とも、こんなふうに砕けた話し方するんだ。
なんて、ちょっと気にしてる自分をどうにかしたくて。
いつもより少し歩くスピードが速かったような気がする。
わざわざあたしを追いかけてきてくれたことが嬉しかったのに。
勝手にモヤモヤしてたことがなんだか恥ずかしくて、結局、彼の顔を見れなかった。

