「あ…、なんとなく?」
「なんとなく?」
「あっ…うん」
しどろもどろなゆずを見て、可愛くて仕方ない。
困った顔したゆずとまた目が合って。
そんな顔が見られただけで十分かななんて、話題を変えようとしたときだった。
「…見えたから」
「えっ?」
「教室から…翔くんが来るのが見えたから」
半ばやけくそにでもなってたのか。
少し不貞腐れ気味に突き出された唇と、少し恥ずかしさの混ざったその表情。
初めて呼んでくれた俺の名前。
これ以上、緩む顔を抑えられなくて。
目を逸らしたのは俺のほう。
きっと真っ赤な顔して、だらしない表情してて。
俺の顔からは、嬉しさがダダ漏れしてるに違いない。
「昨日はたまたま。今日は……」
まだ治まらない熱。
俺と同じように、真っ赤な顔したゆずと目を合わせて。
「今日は、ゆずにまた会えるかなって思ったから」

