「友だちと楽しそうに話してるときの笑顔とか。
美人だということを全力で否定する姿とか…」
何かを思い出して、クスリ笑った秋山くん。
「…あとは隠れて早弁する姿とか?」
「えっ?」
「俺の席、斜め後ろでしょ? 実は、よく見えてるんだよね」
「え、えぇーっ!?」
秋山くんの言葉に、一瞬で顔全体が熱くなっていく。
きっと真っ赤。
それを隠すように両手で顔を覆って俯く。
そんなあたしを見て、クスクスと肩を揺らして笑っている秋山くんに気づいて。
もしかしてからかわれた…?
両頬を押さえたまま、目だけで秋山くんを見遣ると。
そこには、さっきと変わらず優しい顔した彼が真っ直ぐにあたしを見つめていた。
「ウワサとは違う、そんな神崎さんが好きなんだ」
どこかのお嬢様のような、おしとやかで完璧な“神崎ゆず”じゃなくて。
こうやって顔を真っ赤にして動揺したり、表情豊かな“神崎ゆず”が好きなんだ。
秋山くんは、そう言って少し恥ずかしそうに笑った。
その笑顔に、ドキッとさせられたのは言うまでもなく。
落ち着け。
まずは落ち着こう。
そう言い聞かせながら、何度か深呼吸する。

