ハッと、思わず乾いた笑みが零れて。
すれ違う人にまた変な目で見られてしまう。
住宅街のそれほど広くない道で、男子高生が一人で笑ってたら、そりゃあ危ないわな。
不審な目で見られたっておかしくない。
慌てて顔を引き締めたところで、もう遅いけど。
別に、見ず知らずに人にどう思われたって、どうってことない。
それよりも。
いつもヘラヘラしてる櫻井が、あんなふうに強張った声色で話すなんて滅多にないことで。
そっちのほうが気になった。
きっと、櫻井にとってゆずは大切な子で。
だから、傷つけたくないって言うのもわかるけど。
「幼なじみか…」
だからって、櫻井がゆずのことを好きじゃないってわけじゃない。
ただ、彼氏じゃなかったってことに安堵してるのも確かだ。
まだ、望みはある。
望みの何も、まだ行動にだって移せていないのに。
ここで安心してどうするんだ。
自分で自分の考えに突っ込みを入れて、またフッと笑みが零れた。
このままだと完全に変質者扱いされそうだからと、その場から逃げるように家までの距離をひたすら走っていった。
明日。
ゆずを練習試合に誘おう。
応援に来て欲しいって言おう。
それで、俺のことを少しでも知ってもらおう。
そんなことを思いながら。

