モテ子☆モテ男の恋愛事情。



ハッと、思わず乾いた笑みが零れて。

すれ違う人にまた変な目で見られてしまう。

住宅街のそれほど広くない道で、男子高生が一人で笑ってたら、そりゃあ危ないわな。

不審な目で見られたっておかしくない。


慌てて顔を引き締めたところで、もう遅いけど。

別に、見ず知らずに人にどう思われたって、どうってことない。


それよりも。

いつもヘラヘラしてる櫻井が、あんなふうに強張った声色で話すなんて滅多にないことで。

そっちのほうが気になった。


きっと、櫻井にとってゆずは大切な子で。

だから、傷つけたくないって言うのもわかるけど。


「幼なじみか…」


だからって、櫻井がゆずのことを好きじゃないってわけじゃない。

ただ、彼氏じゃなかったってことに安堵してるのも確かだ。


まだ、望みはある。

望みの何も、まだ行動にだって移せていないのに。

ここで安心してどうするんだ。


自分で自分の考えに突っ込みを入れて、またフッと笑みが零れた。


このままだと完全に変質者扱いされそうだからと、その場から逃げるように家までの距離をひたすら走っていった。


明日。

ゆずを練習試合に誘おう。

応援に来て欲しいって言おう。

それで、俺のことを少しでも知ってもらおう。


そんなことを思いながら。