「今、家?」

『そだけど、どした?』

「いや、櫻井に聞きたいことあってさ」


かっこ悪いけど。

グダグダ考えてるくらいなら、いっそはっきり聞いてしまおう。


「櫻井の彼女って……」


神崎ゆず? と聞くはずだった俺の言葉は、櫻井の言葉によって遮られた。


『彼女? そんなのいるわけないだろ』

「は?」

『あのな、昨日今日で出来るかっつうの。ちなみに、ゆずは違うかんな』

「はぁ?」

『何、その間抜けな声は。ってか、今日一日変だったのってそのせい?』


電話の向こう、アハハと盛大に笑い転げる櫻井が容易に想像できて。

俺の顔がどんどん引きつっていくのがわかった。


「だっておまえ、昼休み…」

『ゆずだとは一言も言ってないだろうが』

「でも…!」

『ゆずとは幼なじみ。ガキん時からずっと一緒なの、兄弟みたいなもん、わかった?』


笑ってたはずの櫻井の声が、途端に呆れたような声色に変わって。

仕舞いには盛大な溜息まで吐かれてしまう。


なんだそれ、とこぼれた俺の声は。

櫻井にももちろん届いて、馬鹿にしたように笑われる。