部活が終わったあと。

いつも通り、帰る方向が同じメンバーで話しながら歩いていた。


話題はもっぱら、来週末に行われる練習試合のことだった。


今のところ、俺と秋山はスタメンだけど。

そのポジションを狙ってる奴はこの中にもいる。

今は笑いあってるけど、部活のときはみんなライバルでもあるんだ。

だけど、そのおかげであれだけハードな練習も乗り越えられるのだと思う。


途中、秋山は塾だといって駅前で別れて。

その後も、一人一人とそれぞれ別れて。

最後には一人になる。


賑やかだった奴らがいなくなって、急に静かになったことで。

また、くだらないことをグダグダと考えそうになって。

誰が見ていようと気にすることなく、ガシガシと頭を掻きながら『うあっ』とわけのわからない雄叫びをあげていた。


通行人に、チラッと見られたような気がしたけど。

そんなの関係ない。


おもむろにスマホを取り出して。

リダイアルの中の櫻井の名前をタップする。


数回のコール音のあと、『もっし~』と昨日と同じ軽い櫻井の声。


「よっ」

『おつ、どうした?』


昨日からどうしたよ、とケラケラ笑うしまりのない櫻井の声に。

馬鹿みたいに強張ってた肩の力が、フッと抜けていく。


電話の向こう。

昨日と違って静かなことに気がついて。

今日はあの公園へは行ってないのかと、ゆずとは一緒じゃないのかと安堵してる自分がいた。