モテ子☆モテ男の恋愛事情。



秋山は櫻井とゆずのことを知っているのだろうか。

昼休みに櫻井が来なかった理由を知っているのだろうか。


いつもどおり秋山を見て、どうして平然としていられるのだろうと思う。

俺には、そんな余裕なんてないのに。


歩くスピードが極端に遅くなった俺を振り返り、怪訝そうな顔を向ける。

だけど、秋山は何も聞いてこない。


「先、行くよ」


前を歩く秋山の背中を見て、どうしようもない苛立ちを覚えた。

きっと、それは秋山に対してではなくて。

余裕の欠片もない、自分自身にだ。


「もし、神崎ゆずに彼氏がいたとしたらどうする?」


俺の突然の問いに、秋山はゆっくりと振り返った。

『何言ってんだ』と冷たい瞳の秋山と目が合う。


「何だそれ」


呆れた笑みを浮かべ、はぁ…と吐き出された溜息。


「ゆずちゃんがそう言ったの?」


いつもより少し低くなった声が、誰もいない廊下に響く。


「ゆずちゃんが、彼氏がいるって言ったのか?」


もう一度繰り返された言葉は、さらに低くなった声で放たれて。

憐れんだような瞳が俺を見据える。