そっと顔を上げると。

片手をポケットに突っ込み、大きなあくびをしながら歩いてくる隼人の姿が見えた。


「一緒に登校か?」


ニヤリ、と笑う隼人は。

あたしと速水くんを交互に見遣る。


「そんなのあるわけないでしょ…」


何言ってるの、と無言で隼人を睨みつけるあたしなんてお構いなしに近づいてくると。

あたしと速水くんの間に入って、彼の肩に勢いよく腕を回した。


これだけの大男が加減もなしに寄り掛かれば、いくら速水くんだってよろけてしまう。

それを踏ん張って耐える速水くんは。

『重てえよ』といつもよりずっと低い声で隼人を引き離していた。


この光景。

前に教室の窓から見たことがある。


隼人が人にジャレるのは、あたし自身も経験済みだけど。

学校でこうやって絡むのは主に速水くんだった。


それだけ、この二人は仲良しなんだと思う。

イカつくて、チャラそうで、見た目怖そうな隼人だけど。

実は人見知りも激しくて、なかなか人に心を開かないのだ。


…仲良しなのは、隼人たちでしょ。