「垣内くん、
そんなにのど渇いてたのかなぁ」
「…いや、トイレじゃないのか?」
どんなときも天然バカな言葉を発する美結だが
ソノも変わらずどこか抜けている。
「ちょっと私ものど渇いたし行ってくるわ…」
「私も行こう」
「えっ明日香?懍ちゃん!?」
教室はだんだん
元通りにうるさくなってきたが
残されたソノと美結はとても静かだった。
明日香も懍もかなり
真面目な顔をして教室を出ていったので
さすがに二人ともジュースを買いにいったわけではないと気づいていた。
だからといって
ここから離れるのもなんか違う気がして
とりあえずそばにあった飲み物にお互い手をつけた。
―――ちゅー――
今日はなぜか二人とも紙パックのジュースで
ストローに口をつけた瞬間に目が合った。
――っば!!――
お互いに恥ずかしくなって
顔を勢いよく振った。
教室は完全にいつものように
わいわいがやがやしていて二人のことなんて
誰も見ていない。
(…ちょっと今のは感じ悪かったかなぁ)
(やべっ、今のは感じ悪かったか)
とそれぞれ思ったようで
同時にまた首をゆっくり振り彼を彼女の様子を伺おうとした。
が
目が合ってしまったため
また頭を振って目をそらした。
頬が熱を帯びていくのが
わかる。
頬だけではない
顔が頭が身体が、私・僕自身が熱い。
ソノは窓の外を見た。
さすような日差しが
広く白のラインが入った校庭を照らしている。
もう、
夏がせまっている。
「もっもう、夏だね」
「あっあぁ、夏になるな…」
二人の会話は
どこかかみ合っているようで合ってない。
そんな話を途切れ途切れでも
なんとか繋げて二人は昼休みを潰した。


