近くのファミレスに入ったものの
さっきから美結の話を聞いてばかりで
本題に切り込めない。


ドリンクバーで明日香のお腹はちゃぷちゃぷし始めて
ここにいるのも難しい時間になってきた。


美結も疲れて早く帰りたいはずなのに
最近の忙しさでかなりストレスが溜まっていたのだろう。

機関銃のようにしゃべり続けている___。




「でねっ、その時ソノ君がね…」




…主にソノの話ばっかだが___。

主にもなにも
ソノの話しかしていない。



ソノがどんな指示をしていたとか
いろいろ気づいてフォローしてくれたとか
(私はカップルのノロケでも聞いているのか?)
と思い始めた。




途中違う話になっても
なぜか修正してまたソノの話に戻る。

「あっ暗幕といえばね、ソノ君がね」

まただ、と明日香は思った。




口が恋しくなってきて
思わずストローの端を噛みたくなる。

明日香はずっと無表情で聞いているのに
美結は喜々として話している。





(やっぱ、美結はかわいいなぁ)


しゃべりすぎてのどが渇いたのか
一瞬だけ話が止まったので明日香は窓の外でも見た。





「「!!?」」





驚いたのはなにも
明日香だけではなかったようだ。



めずらしくソノの働かない表情筋が動いた。

綺麗な整った顔が縦にのびている。

なぜか隣にいる垣内は
驚いていないようだ。

”おー”といった顔でこちらを見ていた。