ソノは両耳をふさいだまま
しばらくその場に立っていた。

垣内は教室を出ていく明日香を
目で見送るとズカズカと彼に歩み寄った。


二人が廊下に出てこないので
明日香は一度振り返り、戻ろうとしたが止めた。

携帯電話を手にして
美結に連絡を取ってみる。


(男子は男子に、女子は女子に任せた方が
良さそうね…笑)





美結からすぐに
"ごめん!じゃあ終わるまで待ってて(。>д<)"
と返事がきた。

まだ文化祭実行委員の仕事をしているのだろうか。

明日香は息を吐いてよしっ!と
顔をあげた。





その気合いの入った声を聞いてから
垣内はソノに話を持ち出した。

「…お疲れ様」

話を持ち出したわけではなく
持ち出そうとして、根性なしはやめた。



いきなり
本題に入るのはどうかと思ったのと
ただ単に聞く勇気がなかったのが理由だ。

垣内は
ソノの隣で壁にもたれた。





「…垣内
もう一回、しゃべってくれ…」






ソノはさっきからずっと両耳を押さえている。

今も全く同じ状態だ。

顔を下に向けていているし
ふさいでいる腕で表情も見えない。

何を考えているのか
わからない。





「えっいきなりしゃべれと言われてもなぁ
…あー、あっミスターコン1位おめでとー」






垣内はどこから出したのか
期間限定牡蠣味の紙パックジュースを飲みながら言った。

そういえば、
そんなものをしていた気がする。

垣内も確か
名前を張り出されていた気もするが…
ソノは興味なかったのはもちろんだがそもそも片付けしか来ていないのでよくわかっていない。







「…垣内もだろ?」








ソノはゆっくりと
耳から両手を離した。

安堵した様子で
やっと垣内を視界にとらえた。