「冗談だよ。一緒に食べよ。」

美鈴は言葉に気合いを込めた。

「じゃ、先にファミレス行って待ってる。」

「うん。」

疲れからくるのか、足が重たかった。

自転車にまたがり、ゆっくりとファミレスに漕いでいく。

薫はきっと拓海とのこと話するんだろうなぁ。

ざっくりとは拓海から聞いたけど、それ以上に深いところまで聞かされるんだろうか。

聞かされるって!

我ながらなんて嫌な言い方。

美鈴はファミレスの前に自転車を停め、自分のおでこをコツンとグーで叩いた。

中に入ると、奥の席に座っている薫が笑顔で手を振っていた。

相変わらず、素敵な笑顔だ。

誰もが振り返る。

透き通るような白い腕が、私を見つけてユラユラと揺れていた。

「お疲れさま!美鈴。いやだ、なんだか顔が疲れてるよ。」

「だって仕事終わったばっかだもん、疲れてるよ。」

「そうだよね。しかも店長代理だもん。疲れない方がおかしいよね。」

「何か頼んだ?」

メニューを開きながら薫の顔をちらっと見た。

薫の大きな瞳が私をぐっと捕らえる。

「ううん。まだ頼んでないよ。美鈴は何にする?」

「あんまりお腹減ってないから、パスタにする。」

「じゃ、私も。」

パスタはきっと注文してから届くのにもそんな時間かからないはず。

とにかく、早く家に帰りたい気持ちが先に立っていた。

パスタは思っていた以上に早く二人の前に届けられた。

頼んだナスとベーコンのパスタから、ふわふわと白い湯気が立ち上る。

おいしそう。

お腹がグーと鳴った。