美鈴はアパートに戻り、一息つくためにコーヒーを入れた。

一人がけのソファーに腰を下ろして携帯を見ると、ラインが数件入っていた。

その中に薫からのものもあった。

『水曜日の合コン、いけそう?お相手はお医者さまの卵だよ!玉の輿めざせ~』

あ、そういえば水曜の合コンに誘われてたんだった。

気が進まなかったけれど、薫のお願いだから引き受けたんだっけ。

返信を打つ。

『ごめん。行くつもりだったんだけど、クローバ書店の店長が緊急入院しちゃってお店を空けれない状態なの。本当にごめんね!また今度埋め合わせするよ。』

『そうなの-!残念だわ。せっかく美鈴にも素敵なパートナー現る!って思ってたのに。店長は大丈夫なの?』

『急性盲腸だって。1週間ほど入院すれば治るみたい。』

『その間、美鈴一人でお店守るわけ?大丈夫?手伝いにいこっか?』

『それがさー、話せば長くなるんだけど、例の沢村拓海が一緒に手伝ってくれることになって』

打ち終わったと同時くらいに携帯が鳴った。

「もしもし。」

「美鈴?ちょっと、どうして拓海、沢村拓海がお店手伝うの?」

薫からだった。

相変わらずおっとりとした声だったけれど、明らかに気がせいてる口調だ。

おそらく薫も驚いているのだろうと思った。

「店長がお店で倒れた時、丁度沢村拓海が来てたらしいの。それで、救急車の手配から病院への付き添いをした時に、私一人じゃ心許ないから、一緒にお店手伝ってくれって頼まれたって言ってた。」

「ふぅん、そうなんだ。」

「やっかいだわ。苦手な人間と一緒に仕事するのわ。」