『拓海へ

この手紙をあなたがいつ読むのか、また読む日が来るのかは私にはわかりません。拓海はとても繊細な子だと妹(あなたのお母さん)から聞いています。あなたのお父さんがあなたに何と言ったかはわかりませんが、あなたのお母さんはあなたを産んで、そしてあなたに出会えてとても幸せでした。例え自分の寿命が縮まったとしてもね。だから、自分を傷つけるのはやめなきゃいけない。人を愛する力を取り戻さなければいけない。それがあなたのお母さんの願いです。私は今下に書いた場所にいるので、あなたにすぐに会いにはいけない。だけど、いつかあなたがこの手紙を目にすることがあったら、こちらに是非来てちょうだい。お母さんのこと、たくさん教えてあげる。どれほどあなたを愛していたかをちゃんと私が教えてあげるから。
私は遠い海の向こうであなたをずっと思っています。あなたの幸せを祈って。

美智子(あなたの叔母)より』

拓海は文章の下に書かれた住所に目を落とした。

え?

これって。

拓海の胸の奥から熱いものがこみ上げてくる。

自分の奥深くにある衝動とずっと戦ってきたけれど、ふっと心が楽になっていくのがわかった。

行こう。

自分にとって何が大切なのか。

今何をしなければならないのか。

叔母に会いに行こう。

美鈴が、どれほどの思いでもらってきたかしれない手紙をぎゅっと握りしめた。