「今の音はなんですか!?」



異常を察したアドルフが扉をあける。
扉のすぐそこに座り込んでいるエマを見つけハッとしたように座って様子を見る。




「ま、マオさまが・・・」





エマはそう言って縋るようにアドルフに訴える。
アドルフの視線が俺に向いた。



俺は、一層苦しみにもがき、浮かんでくる感情に身体が支配されそうになる。




なんなのだ、これは。



「・・・かはっ・・・」




自分の身体が、自分のモノではないようだ。
どす黒い何かが、身体をはうような感覚。



「マオさま!」



アドルフが慌てた様子で駆け寄ってくるのがわかる。
しかし、俺は思いとは裏腹に、アドルフに襲い掛かっていた。


唸り声をあげ、牙をひん剥き、血に飢えた獣のように。




「マオさま!すみません!」




アドルフは、こんな状況にもかかわらずそう謝りをいれると、俺が付き出した腕を片方ずつ掴み上げ床に押し倒した。



唸り声をあげ、身じろぐ俺を抑えつけると、懐から取り出した注射器のようなものを俺の腕に突き刺した。
なにかが、注入されていく感覚に、ビクビクと体を震わせる。



すると、次第に意識が遠のいていった。