「きっと、エマもわかるよ。まおーさまのすごさが!」




きっと、私はもう気づいているのでしょう。
あの方が今までのどのご主人様とも違う。




「魔王さまは、皆さまに愛されているんですね」

「そうだね。まおーさまを嫌ってる人はきっとこの城にはいないよ」




そんな人に、お仕えする資格が私にはあるのだろうか。
優しさをもらう資格が。




「俺も、エマともっと仲良くなりたいんだけど」

「え・・・」

「なんか、ちょっと表情変わったよね。すごくいいと思う」

「・・・」



魔王さまと出会って、私が私じゃなくなっている事に気づく。
動揺することなんて、もうなくなっていたのに。


泣いてしまったことを思い返すと、ものすごく恥ずかしくなった。




「エマの笑顔が見たいな」

「笑顔なんて・・・」



この優しさに溺れてはだめだ。
ぬるま湯のようなこの場所に慣れては生きられなくなると。




頭の中で警笛が鳴る。